6.闇オークションで競売に出される話

セリフのみの(わたしの)息抜き回
サタン城で会話しているアルルとサタン、あとからシェゾとルルー

◆ARS+Sの気持ち
アルル:自覚しはじめた片想い時期
サタン:カーバンクルちゃんアルルLOVE ではあるけども
ルルー:サタン様LOVE アルルのことも大事
シェゾ:アルルと会うまでこんな不運続きではなかったはずなのにと思ってる

 

 

 

 

「アルル、今日は提案があるのだ」
「サタン、事前に言ってくるなんて珍しいね。いつもとりあえずやらかしておおさわぎにして「なんでそんなことしたんだ」「事前に説明と確認をやれ」って言われてるのに」
「ふふ、私の活動的なところも魅力的だろう? そう、提案なのだが、ちょっと闇の魔導師のものになってみてくれないか」
「…… えーっと、それは、どういう意味かな。あいつはボクのこと獲物っていってるだけで、最近はカレー食べてくれたりうちにあげてくれるようになったり勉強教えてくれたりもするけどそれ以上ではなくて、どういう意味かな」
「アルルが最近お気に入りだというこのえっちな少女漫画を私も読んでみたのだが」
「なんでそういうことするの!?!? なんっで! そういうこと! するの!?!? どこから知ったの!?」
「いやあ本当に少女むけかねこれは? 男性向けよりも倫理観がすっとんでるというか」
「いいじゃん別に! どういうの読んでたって!!」
「まあそれはそうだ、願望の代替行動としてどういうものを読んでいようとそれは当人の自由だ。シェゾのやつだって、っと、これはやめておいてやるか」
「えっなんでそこは言わないのねえどういうの読んでるのか知ってるのねえちょっと」
「ともかくだな、私はこの「闇オークション」というものに興味がわいた。司法国家とは思えぬおおらかさで人身売買組織に拉致されるヒロイン! 特に組織の人間に手を出されることはなく綺麗な体のまま闇オークションに出品! 盛り上がる競り! さあはったはった!」
「なんか魚市場みたいだなあ」
「最高値をつけるヒヒオヤジ、絶対絶命のヒロイン、そこに凛と響くさらなる圧倒的最高値をつける声、なんとそれはヒロインの想い人……!」
「あ、うん、まあ、うん」
「これ! これがやりたいのだ! というわけで一時的にあいつのものになってくれ。そこを私が買う」
「闇オークションって闇の魔導師がやるからそういう呼ばれ方なわけじゃないよ?」
「わかってるがガチの人身売買組織にアルルを拉致させるわけにはいかんからな」
「うーん…… 仮に、仮にだよ。 ボクがあいつの、も、ものになったとして、出品するかなあ……」
「私が必ず高値をつけるといえば出すんじゃないか? あれも物欲が強いわけではないが、金があれば手に入れたいと考えている魔導具のたぐいは多いやつなのだ」
「うー…… 出してほしくは、ない、なあ…… もし出品されちゃったら、ボク……」
「……」
「それに闇オークション主催するのが似合うのってシェゾじゃなくてサタンじゃないかな!」
「ハハハハハ! 確かにな! あの万年金欠男にアルルのような美少女を扱うオークションなど開催不可能だ! やつにできるのはせいぜいが壊れたビンだのボタンがとれたシャツだのの不用品を洞窟の軒先にならべたガレージセール程度であろう! 闇のガレージセールがいいところだ! ハーッハッハッ!」
「え〜、じゃあさ、じゃあさ、サタンが闇オークションやったら、ボク、シェゾに買われちゃうのかなぁ」
「なぜそこで照れるのだアルル、闇オークションなんぞに参加して普通にお買い上げする男なんてロクなもんではないぞ」
「えっさっきまで言ってたことは」
「そこで高値を出せる資金なり権力なりがあるならそんなオークションぶっつぶすべきではないかね」
「いやまあそうなんだけど、そうなんだけどそれはほらロマンっていうか、自分にすんごい高い価値をつけてくれてるとかイヤっていってるのに強引にモノにされちゃうとこにもこう、あくまでおはなしでのことだけど、実際そうなりたいわけじゃないけど、あくまでおはなしでは、いいなあって、あるのっそういうのっ」
「ほー…… まあ確かにこのヒーローの見た目と言動はシェゾに似ているところもあるが……」
「なんっでそういうこというの!?!?!? ねえ! なんで! なんで!?!?」
「まあ落ち着け、シェゾのやつが最近買った本のタイトルはもっと、いやいやこれはやめておこう」
「あのさあ! ねえ! あのさあ!! 〜〜、じゃあ、じゃあさあ! ボクもいうけど! この漫画の闇オークションの主催の公爵、ヒロインのことお嫁さんにしようと狙ってるけどさあ! あの公爵、絶対秘書のおねーさんのこと好きなんだよ!」
「お、おお……?」
「秘書のおねーさんが公爵のこと全力で一途に大好きなのに、本当に本気で愛してるのがわかるから受け入れるのが怖くて、でも振ることもできなくて、だからヒロインのこと追っかけまわすフリしてるの! すんごい卑怯!」
「…………………………」
「うわだまんないでよゴメン……でもサタン、さては打たれ弱いね……?」

「サタンさま〜〜。来客中しつれいしますう〜〜、お客様がいらっしゃいました〜〜」
「ぬ? アルルとの逢瀬に割り込む価値のある客人かね?」
「ルルー様と、そのお連れの奴隷の方ですぅ」
「奴隷?? ルルーとミノタウロスか?」
「ルルーだ! 呼んで呼んで! ちょうどいいから話し合おう!」
「あっこらアルル」
「お呼びしますねえ〜〜〜」

「……」
「……」
「……」
「……」

「ルルーよ」
「はいっ♡ あなたのルルーです♡」
「なぜそなたは貫頭衣にでっかい鉄首輪をしたシェゾの、その、鎖の先を持っているのかね」
「買ったんです♡」
「買ったとは」
「このヘンタイ、ドジふんで人身売買にかけられてましたの。いわゆる闇オークションですわね。闇オークションで私に購入されたということですわ。おつきあいで出向いた地方領主のパーティで、なーんかきにくわねーやつがコソコソした悪事にじっとりと誘ってきましたのよ。なぜかはわかりませんけれども。わたくし、見るからにこんなにも純真な令嬢ですのに」
「ボクから見てもルルーっていかにも悪の女幹部ってかんじに見えるときあるからねえ」
「おだまりなさい。……で、乗ったふりしてぶっ壊してやろうと参加しましたら、あらあらあら闇の魔導師様が目玉商品として出品されておりまして! んまーー笑いを堪えるのが大変でしたわ、首輪に手枷、でっかい鳥籠型の牢! それが妙に似合うのがまたおもしろくて! ホホホホホ思い出しても笑えますわオホホホホ」
「ほう、それで」
「魔導は封じられておりましたので愛玩用として出品されておりました。で、血走ったおっさんだのマダムだのがどんどん値段を吊り上げていきまして」
「ほう」
「愉快だったので最高値の十倍で買い付けてやりましたわ! ホホホホホ! あの瞬間のざわめき、そして私を見た瞬間のこのヘンタイの顔! 気分がよいったらありませんでしたわね! オーッホッホッホッ」

「キミ、「お前がほしい」とか言ってるくせになにヒトのものになってるんだよ……」
「ありえん不運が異様に続いたんだよクソッ」
「キミはその不運も込みで行動しないとだめだよ。それかボクを連れていかなきゃ」
「……窃盗行為には付き合わせられん。いや、窃盗でなくてもお前を連れて行く理由なんかないが」
「どろぼうしようとして捕まったの? 自業自得すぎる」

「で、なぜここへ? おもしろい私物を見せびらかしにきたというところかね」
「まさか。あの首輪、外していただけませんか? あれには所有者を設定する魔術がかかっているのです。売買契約は完了したので今アレの所有者は私になっているのですが、別に持っていたくはありませんし。引きちぎろうとしたんですがうまくいかなくて」
「引きちぎろうとしたのか、そうか」
「手枷はそれで壊せたのですが、首輪がどうにも」
「そうか」
「もちろんサタン様のお手をわずらわせるにあたり、タダでなんて申しません! サタン様がお望みであれば、このルルー、わたくしの……わたくしのすべてを! すべてを捧げるにやぶさかではございません! さあ! さあ!! どうぞお好きになさって!!」
「よしシェゾこっちにそのルーンが彫られている部分むけろ、そうだ。アルル、そんな目で見るんじゃない。どうせ壊すならボクにちょうだいよみたいな目で見るんじゃない。……よし、壊れたぞ」
「…………この借りはいずれ返す」
「気にするな、お前が私にできることなどそうはない」
「さすがサタン様ですわ♡ 胡桃の殻のように簡単に破壊しておしまいになって♡」
「ボク思うんだけど胡桃の殻も簡単には破壊できないんだよルルー」

「さて、お名残惜しいですが私これからすぐに出かけなければなりません。ありがとうございましたサタン様♡ さ、いくわよシェゾ」
「おー」
「え、どこ? ふたりでどこにいくのさ?」
「決まってるじゃないの、あの闇オークションやってる組織ぶっつぶしにいくのよ」
「普通に買い物したのに」
「あの場は客として振る舞わないとコレ連れ帰るの手間取りそうだったし、そのまま暴れてもより地下にもぐるだけだし、最悪私の立場が悪くなるでしょ。ミノ使って王都まわりの貴族や教会や研究院にあれこれの手筈の書簡とか許可証とか用意させてるとこよ」
「書簡や申請書は俺が書いた。証拠が見つかりそうなアタリもな」
「あとはほっといてもあんなコスい盗品市なんてつぶれるでしょうけど、気にいらなかったのよねーあの場所。他にもいろんな生き物いたし、たぶんほとんど拉致だし。だから物理的にぶっこわしにいくの。公的機関が動くより早く解体させられるでしょ」
「ルルーってスパダリだったんだ……そんな気はしてたけど……」
「まあそんなわけだからこれからちょっと出てくるわ。コイツは鑑定と生体商品捜索要員よ。あとコイツ買った代金もどさくさで回収してくるつもり」
「ボクもいく!」
「冒険じゃないわよ? 破壊活動よ?」
「でも行く!」
「おいシェゾよ、その姿もよ〜〜く似合ってはいるがアルルとルルーに連れ立って歩くならまともな服を着ろ。メイドよ、コレを衣装部屋に連れていけ」
「はぁーい。ささ、こちらへ」

「……あの、ルルー。 買ってくれてありがと…… ルルーが買わないと真面目にちょっと危なかったかもしれないんだよね、きっと」
「まあ、そうねえ……結局なんとかしたかもしれないけど、「無傷」ではなかったかもしれないわねえ」
「やっぱり危なっかしいよねシェゾって」
「アイツもあんたにだけはそう思われたくないでしょうね」

「支度できたぞ。行くぞ筋肉女、転移だ」
「私に指図するんじゃないわよ、アンタを買ったのはこの私よ。ご主人様とお呼びなさい」
「あ? やんのか?」
「なによ? やる?」
「ぐっぐぐ〜〜〜〜!」
「あっ、カーくん! サタン城食糧庫食い尽くしチャレンジ、気が済んだ?」
「ぐぐ〜!」
「これから冒険、じゃなかった、破壊活動だよ! わくわくするねえ!」
「するんじゃないわよ」
「するんじゃねえよ。……あー、二人ともつかまったか? カー公も。じゃあなサタン」
「いってきま〜す!」
「ぐ〜!」
「しばしのお別れですわ、サタン様〜!」

「……行ってしまったか。結局、私は「みんな」には入れず、いつも置いていかれるほうなのだな……」
「サタン様」
「なんだね」
「食糧庫近隣の畑が消えました。衣装庫にあった魔導具も、いくつか、その、いつのまにか……申し訳ありません」
「……闇オークションでもやって資金にするか。適当な不用品あつめておきなさい。あとでっかい鳥籠型の牢とかあったら出してくれ、あいつ捕まえてもう一度出品してやる」