新魔導物語3 シェゾと悪の華(角川スニーカー文庫 山本剛)

すんごいおもしろかったです!!
以下ネタバレ込み。

今回もよかった


魔導物語A・R・Sを下敷きとした「新魔導物語」三部作ラスト、シェゾ編です。
2巻のルルー編同様、ゲーム本編のその後の話。

1巻は要素の再構成&王道の行きて還りし物語、2巻はアイテムと謀略のうまさと乙女心、3巻はまさかの叙述トリックと悪の矜持!

序章がいきなり山本解釈がいいかんじで、元々スペック高くて退屈してたからいっそのことで悪に惹かれてた、とか、名前が示す古代語の意味は偶然だとか、シェゾ編のクライマックスの描写とか、はーーーーそうくるんだ、ルルー編といい人格を良い解釈してんな〜〜〜〜ってなってました。
ゲーム本編では「誰がワルモノになんかなりたがるかよ」といってたのでそこだけは一瞬ひっかからんでもなかったんですけど、ゲーム本編で突然悪堕ち発言しだすよりは納得できる流れだし。

あと序章、ルーンロード、シェゾと「結ばれる」ことについてまんざらでもない感じの発言してたので「稚児趣味か? おん?」って、このところ静かにしてた私のなかのふじょしが起床しかけたので帰っていただきました。おかえりください。

本編の場面転換がなんか違和感? んん? と思わせておいて、実はニセモノシェゾとホンモノシェゾの二人が同時展開してる、そしてニセモノっぽいほうがホンモノでホンモノっぽい方がニセモノといういいかんじの叙述トリックで今回は読者を楽しませてくれます。でもハニービーに刺されたシーンの整合性がうまくとれないんですけど、あいつ両方刺したってこと? んん?

やっぱり本作でもルルーとの関係性が良いですね。シェゾが本当に外道に堕ちるのを引き止める、ルルーのある種の信頼からくる言葉、とか。
つくづく、山本の推しカプがシェアルならよかった…… 新魔導の唯一にして最大のアレポイント、作者のメアリー・スー的オリキャラ×アルル・ナジャが本シリーズの作者お気に入りカプであるということ……

新魔導唯一の欠点

ていうかこのオリキャラ、当時読者にどういう受け入れられ方してたんでしょうね? 令和コンプラだと読み返せる気がしないらんま1/2のように(再アニメ化がうれしいけど怖い)、当時は「年上のオトナで優しくて強くておちゃめな美形の先生すてき……」ってなってたのかしら……カードキャプターさくらの雪兎さん的な感じだったのかしら…… 令和の中年女性目線だと一刻も早く収監すべきとしか思えないんだけど……シェゾよりよっぽど相当にガチの変態なんだけど……

シェゾ・ウィグィィ転換期の作品だったのかなと考える

ところで角川魔導1巻とだいぶシェゾのキャラが違うよな……と思ったのでちょっとゲーム発行年月と角川魔導発行年月をまとめなおしてみました。

こんなかんじ。ARSの発行からは実は3年後、というちょっと時間があいての新魔導1巻です。
ただ新魔導1巻が発行されたその年、96年にアルル・シェゾ役のオーディションが行われ、私がさんざんさわいだ大塚雄史郎がシェゾ役として抜擢されることになります。
でもってこの年にDS12号の「シェゾの一番長い日」がリリースされます。「シェゾの一番長い日」が新魔導3巻(97年発行)の着想になったんだろうなというのは読んだ人が全員同意してくれるところのはず。

つまり新魔導3巻は「シェゾの一番長い日」やぷよSUN反則CM(これもおそらく97年)などの、大塚シェゾのイメージとR編の元気な少年のイメージをもろにくらいまくって作られてます。いや無理もない、あれは良い意味で全部塗り替えられるしこっちのほうが魅力的だって思わされてしまう、無理も無い。
で、おそらく大塚ショック以前の角川魔導のシェゾは98版などの、でっかいギリシャ彫刻のような20代後半にも見える成人男性です。ぷよぷよシリーズではかわいいデフォルメ顔ではあるけど、あれもデフォルメ前はでっけー青年なんだ、というフィルターが働いてたはず。ただ大塚声で一度聞くと少年にしか見えなくなってしまう、不思議。
いや本作でも成人ではあるんですけどもっといろいろと少年っぽさと生身っぽさがある。本作以前は美学とかそういうのたぶんぜんぜんない。ただの悪役、障害物、NPC。
一人称もしれっと本作から「わたし」→「オレ」になってるし。(これも伏線というかミスディレクションとは思わんかったが)

本作カプがオリキャラ×アルルでさえなければ…… と思うんですがこれも因果関係があれなんでしょうか。
シェアルが加速したのって大塚が出現してからだったりするんですかね?  初期魔導の取説を見た感じだとシェゾって本当に障害物の魔導師くらいのかんじで、むしろそういう相手としての可能性がまだあったのはサタンではって印象があるし、A・R・Sの取説でもシェゾ個人にライト当たったのはA・R・Sが最初っぽく見えるし。…… 当時のコンクラ見たらわかるのかもしれないけどもまあいずれ国会図書館にでも行きます。

「華」の話でしたね

シェゾ編と大塚シェゾから受けるイメージを悪の美学を持った「神を汚す華やかなる者」として再編集した本作解釈、これがファンの間の解釈に影響を与えたというのも理解。これでいこう、ってなるわこりゃ。運命や闇の剣についても、これでいこうってなるわ。あと本作は普通に見た目通りの年齢のシェゾですね。

ゲーム本編ルンロの「悪の華」「芽吹いた」というセリフと、シェゾの名前の意味、それに「シェゾの一番長い日」を混ぜて(どうしてそこ混ぜた?)(かわいかったから?)構成された本作、プロの仕事でした。読めてよかった。

容姿の話

あと壱さんの挿絵、今回もよかったな……
ショルダーアーマーがでっけえのが「時代」。あと文中で黒衣って書かれてた気がするけど白服だなとか……いや黒服になったのは魔導師の塔かららしいしまだ黒は14歳しか着てなかったのかな?

あと白服だけど髪がまっすぐさらさらストレートで、実は壱さんはふわふわに描かない? となったりしてました。

でもって最終決戦はARS(とカーバンクル)の総力戦、そしてSUN販促ビデオ的なオチ、と、ぷよぷよっぽさもあってよい三部作の締めでした。
A・R・Sプレイ後に読めてよかったな〜〜、3人ともより好きになれました。
次はしばらく二次創作とぷよ主義原稿です。