よみました。
おもしろかったな〜〜〜〜! 角川魔導1巻で うーん うん……ってなってたのでだいぶ警戒しながらの新魔導だったんですが1も2もおもしろかったな〜〜〜〜。
本作は魔導物語A・R・Sのルルー編を下敷きにした後日談というかその数年後のお話、です。
まず序章からすごくよくて、どうしてルルーがサタンを好きなのかというのがすんごく納得感ある語りになってるんですよね。
角川魔導1巻のアルルの恋心描写がだめだったので(シェアルじゃないからというだけではなくて)こういうとこで「ほう……」ってなるとは思わなかったです、よい誤算。角川魔導1巻のあれはあれで恋に恋するオンナノコの描写だったってことなんだろか。
「男性としての全ての優しさと人間よりも人間みのあるところ」に惹かれている、という、は〜〜〜〜〜なるほどな〜〜っていう。超男性性というかアニマというか、超越的な存在でありそこに憧れだけでない感情をもって恋心としているみたいな、あ〜〜いいなそういうの。
ルルーのアイデンティティの魅力の描き方もうまくて、パパとママにはなかなか会えないけど従者たちには慕われているしルルーも主人として従者を大事に思っているし、そういう、周囲に愛されてるし愛してるから自己肯定感が高くて、スペックの高さもあって言動がはっきりして強いから「タカビー(死語)」にも見えるけど堂々としてる、ていう、ベースと出力がよくわかる見せ方で、いいなあルルー……ってなりました。ちゃんと主人公として魅力的なレディになってる。ところどころで見せるマナーをきっちり仕込まれてるレディっぽさとか、喧嘩をおさめる為政者サイドのふるまいとか。
あと本作サタン、やっぱり一人称と口調の違いが気になるんですけど、マスクド状態で出てきたサタンがゲームでよく知ってる一人称と口調で、「演じる」ときにはああなって、素だとオレなのかもしれないなとか思ったりも。実は他作品でも「サタンさま」として人間と接してるときはああで、素がオレだったりしてもおもしろいかもなあ。
あとあと、「人間界ではおちゃらけてるけど魔界ではそうはならない、隙を見せない男になってしまうぞ」とか「人間は魔界には耐えられない」とか、嫁入り後の懸念事項的なのが出てくるのもなるほどな〜〜ってかんじで。まあこの情報に関しては提供者があんまり信用できないんですけども、結婚後の不安要素を語るのちょっとおもしろいですね。
本作では他にも、他作品で出てきたいろんな設定やリアル世界で販売されてたいろんなものやぷよ協会(これ実際大会とかもあったらしいですね)なども存在してることが言及されたりとか、あ〜〜このへん当時のコンパイルのこと追っかけてた人ほどにやにやするんだろうなっていう些細な仕掛けが多くてそういうのも楽しかったです。作中でルルーやアルルがももものお店で当時実際に販売されてたであろうセットを買って行ったりするのも。
しれっと廃都ラーナを通り過ぎていったりもする。
ARS本編のルルー編で出てきたいろんなギミックや場面の使い方も新魔導1同様うまくて、とくに雲樹の実をああ使うっていうのがすごい! よいですね! そうくるんだ! やっぱりTRPG作家はアイテム使いがうまい!
でも本作サタンはけっこう、女をテストするとかそのうえでルルーアルル選べないとかわりとカスだなとも思う。そこはしかたない。カス。いやでも本作サタン、ルルーにわりと優しい……いやでも「テスト」、そのうえでどっちつかずってやっぱカスだな……優しいだけにカスさが増すな……
カスといえば本作シェゾ・ウィグィィ、最高でしたね!!!!!!!! カス!!!!!!!!!! 最低!!!!!!! 最高!!!!!!
いやーーーー突然のシェルル展開すごかったですね!?
しかもだいぶページ数割いて展開してましたね! ウィグィィ、本気出せばやれるんじゃん! ああいうの! やれるんじゃん! 壁ドン顎クイ真摯な口説き文句、やれるんじゃん! 自分の容姿の効果正しく運用できるんじゃん! 最高!!
あんまりにうますぎてちょっとページ閉じて休憩した。
私は文章で美青年の美形描写を浴びるのがイラストで美青年みるより好きでそこに美形に相応した行動をとられるのが本当に 本当に だいすきで…… ありがとう……
そして終盤でそのシェゾの行動の理由がわかったときも 最高!!!!! カス!!! 悪役!! ヴィランっていうか悪役! 悪党! 最高!!!! ってなってました。
いい……ちゃんと悪事を働くウィグィィ、いい……そしてこういうの、いろんな意味で対アルルでは見られない姿だろうから、いい……ありがとう山本……
というかわたしシェルルってわりと好きで、いやカップリングとしての成就は想定してなくてそこはシェアル一本ではあるんですけど。
なんかシェゾとルルーは「ここでくっつけば一番安定して安泰っぽい」ってかんじがあって。
「かぐや様は告らせたい」っていう漫画があるんですけど、あれ、生徒会会長と副会長が意地を張り合う恋愛心理戦漫画、だったわけなんですけど。
もちろんメインかつ不動のカプは会長副会長なんですが、ちょいちょい「実は会長と書記(巨乳美少女)のほうが相性はすごくいいし双方の性質の需要と供給が一致している」ということを見せつけるエピソードが入ってくるんですね。
でも会長と書記には恋愛感情は一切発生しないし、どれほど相性がいいのかも自覚しないし、なにより会長は副会長のことが好きなんですよ、副会長とうまくいくには心理的にも環境的にも相性的にもものすごい困難と障害があるのに。
わたしの思うシェルルのよさってこの「会長と書記」に近いところがあって。たぶん相性がいいのもうまくやっていけるのもここなんだけど、シェゾはやっぱりアルルのことが一番気になってしまうし、ルルーはサタン一筋だし。けどつきあったら一番うまくいく二人ではある、みたいな。
本作でその可能性みたいなもの見せてくれて、かつシェゾがだいぶ「色気でだます」系の言動をしてくれて、かつおそらく口説き文句で用いた評価もわりと本当に思ってるところもあるんだろうなってかんじで、ルルーもそこそこにまんざらではなくて、とても、ありがとう……ありがとう……でしたね。
口説いた理由があまりにも最悪のカスのそれだったし……(最高)
でもうっかりルルーが受け入れちゃったらそれはそれだったかもしれないな、あのシェゾは……いやどうかな……どうなんだろうな、案外うまくいきすぎてそうなりたくなくて自分でネタバラシしちゃったのかもしれないしな……
また闇の魔導師の話ばかりしてしまった。
本作、全編通してルルーの魅力と可能性をたくさん感じられてよかったです。
ラスト夢オチにする必要あった? というか夢オチものばっか見てる気がするな、詩子のあれといい新魔導1といいぷよポップといい、と思いはするんですが……
サタンが「どっちにしようか迷ってる」っていう状態にするのがよくなかったのかな…… あれそのままで別によかったんじゃないかな……
あと本作の表紙とカラー口絵、壱さんがCGにチャレンジしてるんですが「photoshopはじめてみました! ブラシ塗りです!」みたいなかんじがすごくて微笑ましいというかもったいないというか。次巻ではアナログに戻っている。
とりあえず次はいよいよシェゾ編ベースの3巻です。
今作のシェゾがだいぶカスでよかったので期待。