A・R・SのA編クリアしたので読みました。
角川魔導一巻が「うんうん、それもまたひとつの歴史だね」という感覚でいたので期待値下げて読みはじめたものの、かなり好きでしたこれは! 読んでよかった!
以下ネタバレ配慮なしの感想。
新魔導物語三作はA・R・Sのノベライズ、ということではあるんですが、だいぶエッセンスを抽出して再構成したり後日談だったりする気配です。
というか角川魔導1巻がもともとのストーリーがないものをキャラを使っての創作だったから、だから「ああいう」かんじになったのかな、本作はベースがあるからよかったのかな? などと思ったり。
三十年前のゲームノベライズっていうのはだいぶ無法地帯で、傑作もあれば駄作(と言い切る)もありました。以下今も忘れられない名作と駄作を50行くらい語ってたけどまあ別にいいやと思ったので消し。
A編の展開をそのままに進めるのではなく、要素を抜き取って再構成してるんですね。
A編は森に迷い込んでそこから脱出するまで、といういろんな童話をミックスしたお話なんですけども、本作は物語論で語られる「行きて帰し物語」の典型的な類型です。
主人公は旅に出て、成長したりしなかったり何かを得たり失ったりしながら帰還する、それだけ。そしてそれだけの物語は数千年前から語られており、今も現役。一番古いのは「オデュッセイア」かな?
本作アルルは大好きなおとうさんが帰ってこない、というつらさから本文でいう「ダウン」状態が続いています。
そんなある日、寝落ちしたアルルはいつのまにか「おとぎの国」に訪れており、家に帰るために旅をすることになります。
この「おとぎの国」に訪れたときのシーンがA・R・Sのオープニングデモとおんなじで、青空の中をアルルがどんどん落ちていって花畑におちてぷはってなるやつ。あれだ! あの音楽すら聞こえる! てかんじですごいよかったです。
で、この、4才(4才にしてはかなり賢い)がおとぎの国を次々冒険する、というのがとっても児童文学で、地の文の語りかけの優しい口調もあわせて「つばさ文庫の味がする〜〜」と思いながら読んでました。いやつばさ文庫も角川だから同じっちゃ同じだし、近年のつばさ文庫はかつて角川系ライトノベルが担っていた読者層を受け止めているという話も聞くんですけども、ええ。
おとぎの国の登場人物たちはみんなA編のザコキャラたちが生き生きと役割を与えられながら動いてて、カミュパイセンも出るんですがたぶんあのパイセンも……
主人公が旅をする、というのは男性作家がよくやるし女性作家があんまりやらないやつかもしれんな〜〜と思いました。女性作家は人間関係で展開と成長を描くのでじつは場所移動ってあんまりないけど、男性作家は人間で変化はしないので主人公に変化を与えるためにどんどん場所を変えていくというか。SF小説読んでても人間のエピソードを描くか状況を描くかで性別がわりとすぐわかったりする。
で、私は普段は女性が描くファンタジーとSFをよくよむので、旅する主人公、意外と新鮮かもしれない……と考えたりしてました。
ラストでは本作著者お気に入りのオリキャラがまたいいところを持って行くんですけど、もしかするとメディアミックスでオリキャラがいるのってありがたいことかもしれないなとも感じました。
わくぷよダンジョンのコミカライズもそうなんですが、原作にいないキャラが存在することで「これは明確に別バースの話」という区分けができるから。「この世界のアルル」みたいな考えかたができるから。それはそれとしておいしい設定だけはいただいて正史もそうだったという扱いにするんですけど……
そうそう、おいしい設定。
以下、美味しい設定と思ったやついくつか。
・おとぎの国にはいれる絵本
おとぎの国で得た心の成長はそのままにそこで過ごした記憶はないというこのアイテム、洗脳に使えそう〜〜〜〜というよくない用途が真っ先に思い浮かんでしまったのは置いておきます。
・心の指針になりがちな「おとうさん」
1ページ目のカラー挿絵に「おとうさん」の姿描かれてて「いいんだ!?」ってなりました。あと確かお父さんが行方不明になった経緯は原作では触れてる資料なかった気がする(もちろん全部はさらってないけど)……ので本作が共通幻覚になってる……?
・シェアルの人がシェアルを無理やり見出したところ(本作にはシェゾ・ウィグィィは出演しておりません)
この「おとうさん」のお仕事、多岐に渡るんですが、これシェゾも(二次創作で)わりとだいたいやってることだ……というシェアルの人の妄言も添えておきます。フリーランスの魔導師の仕事内容となるとおそらく誰が考えてもそういうかんじになるのではというあれは置いておいて、でも、なんか、似てるといっていいかな!! と思ったりしました。 だいぶファザコンかつ幼少期に離別してるので「おとうさん」が理想の男になってるアルル、あると思います。そしてうっすら似ているところがないといえないこともない闇の魔導師……
・装甲魔導アーマー
魔導師のシンボル的な扱いである、としれっと紹介される「装甲魔導アーマー」。いいですね。「魔導物語」では魔導師はでっかい杖をもってるわけではなさそうなので(S編のデモのでけー杖もってる14歳はすごくすごくよかったけども)、この「装甲魔道アーマー」が魔導師っぽさ、みたいな世界だとちょっとぐっとくるなと思いました。ローブや杖ではなく装甲魔導アーマー。
本作著者はTRPG作成をメインとするところに所属してるので、こういった細かいプロップの設定をさらっとつめてくるところにぐっときます。角川魔道1巻の「召喚スクロールには使用期限がある」とか「メタドライブ」とか。
本作が思いがけず好きだったし2、3巻もぱらぱら見てみたらけっこうこれは……好きなやつなのでは……?
という気がしたのでR編もやります。
これA編のプレイ有無でけっこう感想かわる本だなーと思ったし。もちろん単品でもよくできたおもしろい本ではあるんですが、A編やったあとのほうが感想が増える。
はよ新魔導3巻まで読んで二次創作に戻りたいなという気持ちもあるものの、R編をプレイしてから新魔導2を読む、という体験は一度とりのがすと二度とできないわけなので、やっぱりやる。
新魔導2、ちょっと見たらなんかシェルルがあったから……気になるので……