記録です。
おえかきについては別の場所でまとめたんで今回は装丁の話。
同人誌で装丁っていうと紙選びなどのスペックの話になりがちなのでエディトリアルデザイン、誌面デザインの話。
企画立案
今回「ぷよまどバージョンのタロットを考える」ということで、大アルカナ22枚がそれぞれ1ページずつ、でっかく絵がはいってそこに解説文が入る……という、タロット入門書としてオーソドックスなものを検討してました。
それがこの初期案。
タロットの説明って絵柄ありきなのででっかく扱うのが自分の中でデフォなんですよね。で、文章もほぼできてたしまあこれで流し込めば一週間もいらんな、なんならこの土日で終わるな〜くらいに思ってました。
ウェイト版タロットの絵(著作権切れてるので引用しても大丈夫)と解説テキスト、ゲームファンの同人誌としては異彩でしょうがまあ最小労力でこぎれいにまとまる。これでも問題はない。この本の本体はテキストにあるし。
なおこのレイアウトはIllustratorで半日程度でざっくり用意しました。
このへんは一応本業なのでなんの山場もなかった。
が、つまらんな、とも感じました。
同時に前ジャンルで「私自分の本にはイラストとか入れたくないんですよ、人前で読んでも恥ずかしくないようにしたくて」と言ってた字書きに遭遇した際の想い、そしてその時の誓い、「私は今後出す同人誌では絶対にキャラ絵を入れるぞ」を思い出しました。
ので、このレイアウトに自分の絵でも入れるか……
大アルカナの絵をジャンルのキャラで描こう……
絵はもうメインではやらないつもりでいたけど挿絵ならにぎやかしだしまあなんとかなるだろ……
そんな、軽い気持ちでのハイキングが実はでかい山だったことに気づくのは後日……
バージョン2:絵を用意
で、大アルカナ22枚の絵を描いていきました。ただ思うより手が動かない。ブランクが長い。
でも単なるブランクだけにとどまらず、なんか36ページ漫画よりも険しさがある、たかが22対の全身図で? なぜ?
というのが後半になって理由がわかりました。全部まじめにちゃんと全身描こうとしてるから。
漫画って、実は1ページあたりの中で気合いいれてしっかり全身ポーズの整合性とって描く人体って、1、2体くらい。下手したらそういうの3〜4ページに一体くらい。あとはバストアップとか吹き出しだけとか背景とか状況説明用の配置とかデフォルメ絵とかなんですよね。TLとかBLだと難易度高い人体が次々に繰り出されてきたりもするけども、逆にポーズなどは連続性があるから構図をゼロから考えるコストは低い。
全部全力新規の22ならそらきついわ、無理、22体は無理、というか半端なタロットの図像学の知識が邪魔してくるのでガチでモチーフの考察とかしながらの置き換えでないとやりたくないわこれ。
となったのでとりあえず目標を半分に切り上げて解説に挿絵形式にしました。
バージョン3:絵を半数にして台割とレイアウト
で、ある程度キャラをばらして配置ながら台割。
絵を入れるならタロットの絵は小さくしよう……というかウェイト版の絵と私の絵が並ぶとこちらの素人っぽさがあまりにも強くなるので小さくしようモチーフ解説あんまりやれなさそうだし……というかんじでレイアウト調整、基本は1ページに2枚紹介の構成に。
ついでに、今回露骨なカップリング要素は入れてないんですが、紙の本なのを活かして間のページをつまむとコンビ絵になるとかカプを対のデザインにしたりとかひっそりしました。
それで発生した空きページに埋め草用文章を用意したりしつつ台割も終わり。
ここでデジタルトーンの導入。
グレースケールでもよかったんですが、私はスクリーントーンのドット感が好きなのでこれは「買い」でしょうと購入です。
誌面レイアウトにもトーンをふんだんに使いました。同人誌ってかんじでよかった。
作業の流れ
もっといいフローがあったのかもですが、こんなかんじでアプリ行き来してました。
- スキャン(というかスマホで撮影)したラフをもとに、プロクリエイトを使ってひとまずグレースケールっぽいパレットで描く
- 1を適当に軽い解像度で書き出したもの(配置用ラフ)を配置し、イラレで誌面レイアウト。イラレ用デジタルトーンでイラスト以外の部分のトーンも貼る
- イラレで全ページを解像度600のpsdに書き出し。テキスト保持してると重くなるのでここでフォントはアウトライン化しておく
- photoshopを使いpsdを一枚ずつ開き、1からそれぞれのページ用のイラストをもってきて重ねてphotoshop用のデジタルトーン貼ったりする
- 画像を2値化してレイヤー統合、ファイルの連番を確認
3でどうやってもpsdに変換できなくて「詰んだ……もう最高推しカプ委託本があるしこんな需要謎本どうでもいい……」という気持ちになりましたが、落ち着いて検索。オブジェクトに透明要素があると書き出せないとのことだったので「こいつか?」とデジタルトーンを分割拡張したら大当たりでした、よかったよかった。
あとメインPCがmacなのでipadとの移動がすごくシームレスで、appleで固める恩恵ってこれだよなという実感。
入稿と手元に届くまで
で、入稿です。
今回はおなじく「せっかくなので」、表紙と本文を単色印刷。小説だと文字は黒でないとノイズになるなあと思うのでこういう本ならではですね。
あとインク色に近そうな遊び紙も前後に入れました、これほんとにやってよかった〜。一冊の本としての存在感がぐっと上がる。
とか言ってたら! 届いた!! 本だ!!! pic.twitter.com/zWJtu9fJ62
— カド@ぷよ主義A-18 オマケ考え中 (@kadonokado2424) September 14, 2024
新・星物語というのを遊び紙にしました。直前までスプリンクルというのと迷ってたんですが、後日別の場所で見たら裏側がまっしろな包装紙だったのでやめてよかった。
今回の印刷所はここ。おたくらぶさん。
事前に装丁してた紙(ファーストヴィンテージ)が単色印刷だとできなかったので急遽色上質に変更、まあこれはこれで。
あと今回はスクリーントーンばりばりに活かすぞと決めてたのでモノクロ2値での入稿で、これも初めてだったんでちょっとおもしろかったです。いつも小説だからPDF入稿だったし、仕事だとモノクロ2値の入稿ってまずないし。
あと今回、配置するカードやおすすめ本の書影を全部念の為にphotoshopで2値化して貼り付けてました。↓モニタで拡大するとこんなかんじ。
モニタでみると「本当に大丈夫か?」という点描になってるんですけど(ドットにばらつきがあるとモアレになりやすいときいてたし画面上ではわりとばらついてた)、印刷されたものを見たら綺麗なグレースケールでよかったよかった。
あと自分の絵にトーンが貼られたやつが印刷されるのを見るの、二十年ぶりくらいでこれもよかったです。やっぱこのツブツブよ。
イラスト文章デザインと全部自分でやれるから紆余曲折ありながらもそこそこの期間でまとめられたな、これ全部別の人だと大変なことになってたな、その大変なことをしてるのがアンソロとかなのかそうか……という畏敬の念を持ちながらの制作でした。
価格調整と入れたかった内容まだちょっとあるのでこれからおまけのコピー本作り。
おもしろかったので半年後のイベントでは原作ゲーム感想本やろ。やれるといいな。