シェゾ・ウィグィィの変遷を考える(4)

前回記事からつづいて、セガ移籍後のシェゾについて考えます。

 

前回までのあらすじ

幻想小説、ダークファンタジーの住人をモチーフにして生まれたシェゾ・ウィグィィはその後スタッフの手を経て黎明期のライトノベルの登場人物的な造形になりました。
それにならって身長も「境界のむこうを知る存在」的なものから「能力の高い人間」みたいな変更があり、種族がエルフからヒューマンになった的な変更になりました。
海外のカリスマモデルからイケメン俳優へ。

ライトノベルには「ブギーポップは笑わない」という黒船により学園ものブームが押し寄せることになるのですが、それ以前は剣と魔法、それもグループSNEのロードス島戦記およびソードワールドのファンタジー世界ものでした。この「ラノベといえばファンタジー」な時期を私が個人的にライトノベル黎明期と呼んでいます。それ以前はジュヴナイル小説とかヤングアダルトとか呼ばれていたはず。

コンパイル後期、というか黒衣にイメチェンしてからのシェゾは「TRPGのリプレイ本で主役っぽい顔してそう」な感じになっています。あるいは家庭用ゲーム機のプレイアブルキャラ。魔導師というより魔法も使える剣士なのかなと思わせるたたずまい。当時の主役系に流行な髪型。真ん中分けストレートヘアのバンダナ、まじで多いぞこの時期。

まあいろいろ言って私個人が「シェゾ……ウィグィィ……?」と初めてイケメンとして認識したのが「よ〜ん」の店頭ポスターだったので黒衣の剣士スタイルが好きです……白衣装はぷよ通とSUNの小さい等身で「なんでこの人パジャマみたいな服着てるんだろう」とおもってたから…… えっこんなかっこよくなっちゃってるのとおもったから……

セガ移籍のあれこれ

私はこのへんのあれそれを詳しく知らないのですが、コンパイル解体後、「ぷよぷよ」の版権と「魔導物語」の版権が別々になったらしい、というのは存じておりました。存じたのはわりと近年。

で、ぷよ通、SUNのイメージだったところにゲーセンかゲームショップかで新生ぷよぷよのキャラクターデザインを見たときの個人的な感想なんですが(以下検閲)

当時ポップンミュージックみたいと言われていたし今も言われてますね。参照元、カートゥーンではなくポップンだと私も個人的におもってる。ポップン、勢いすごかったから当時。でも当時の段階で「今このテイストなんだ……」っていう古さが(以下検閲) ちなみにそのポップンのほうは逆に近年、魔導物語的な作風になってますね。人外多めでプロの絵と同人みの境界線っていうか……

さて、セガぷよはキャラクターと世界観を一新し、「ぷよぷよ」という大ヒットパズルゲームのシステムだけを再展開させようとしていたのは外側から見てもあきらかです。魔導物語の版権は得られなかったのかイラネしたのかはわからんところですが、魔導物語のキャラクターを使えないならそれはそうでしょう。「ぷよぷよ」の競技人口もキャラファンではなくパズルゲームプレイヤーが支えているものと思っていたのでしょうし。

が、結局はコンパイル時代のキャラクター、いわゆるぷよクエでいうところの「初代」がひっぱりだされてくることになります。
魔導物語の版権がないのにどうしてどうやってというのはあれなんでしょうな、パチンコでお金はもらえないけどごほうびに謎のゴールドがもらえてそれを指定の店で換金することができるとか、売春は禁止されてるけど風呂場でたまたま出会った男女が恋愛関係になったしそこで個人的なおこづかいのやりとりがあっただけという施設があるとか、なんかそういうあれがあるのでしょう。

結局「初代」がひっぱりだされてくるというのは、当初セガ側が考えていた以上に「ぷよぷよ」とアルル・ナジャという存在は切り離せないイメージのものであったからだということでしょう。ゲームタイトル自体の求心力には、アイドルグループでいうところの「センター」が必要だったというか。彼女がいないぷよぷよは「ホンモノ」のぷよぷよではない、という意識が、キャラ推しでないプレイヤーにもあったのでは。
当初は遠慮がちにゲストキャラっぽく出てたアルルをきっかけに、結局主要どころはほとんど全員しれっとセガぷよに参加することになるんですよね。

現在の「ぷよぷよ」の販促を見ていても、結局グッズ売るぜというイベントでトップにいるのは「アルル・ナジャ&カーバンクル」です。アミティとアルルを並べてもまだ「最強初代に添えられている新人」感が強く、「りんご」を追加して3人グループにすることでようやくパワーバランスを制御できたのではと私は思うのですが、どうなんでしょう。アミティが……アミティちゃん自身は悪くはないけども、「ぷよぷよ」というブランド力すべてをこいつの背中に乗せてやる、「顔」にしてやるという気負いすぎたデザインがさあ……今はもちろん当時から(以下検閲)

アルルのデザイン、栗色のショートヘアにハーフアップ、白と青が基調のアーマーにマント、ミニスカートっていうの、すごい「時代性」に強いモチーフだなーと思うんですよね。30年前でも今でもかわいい、どういうこと。ルイス・キャロルさんちのアリスみたいな強さがある。アミティは……平成感強すぎませんかね……(検閲から少し漏れた)

セガシェ

前置き長くなりました。
で、そういう経緯でアルル・ナジャに導かれしかたちでセガぷよにも参戦することになったシェゾですが、アルルの髪型やファッション同様、セガぷよナイズされます。

セガぷよキャラはデフォルメの強い絵柄なので特徴が強調されるというか強調が追加されるんですけども、わかりやすいのはつむじのアホ毛と耳の上の跳ねた毛ですね。等身の小さいデザインでシルエットを差別化するための処理と思われます。
あとはっきりと水色の髪の毛。グレーによる銀髪の表現は先客がいたからですかね。

わたしの大好きな、美形を描写する説明文が失われてしまったところがいちばんかなしいかもしれない……セガにおいても他の追随を許さない美形であることを公式テキストで表記してほしかった……されてますかねどこかで……

そしてセガ移籍で生えてきた設定「かわいいもの好き」「ケーキ作りが趣味」ですね。かわいいもの好きについては、わからんでもないです。

というのも、コンパイル時代は「主人公の力を付け狙う」というのはメインストーリーに関わる十分な動機でストーリーを掻き回すトリガーたりえたのですが、セガのアルルは主役ではありません。
なのでストーリーに関わらせるためには、アルルの力を狙うとか魔導力を欲しているとか以外の「ほしいもの」を設定する必要があります。それが「かわいいもの好き」になった、ということでしょう。セガぷよの世界観的にちょうどいいところではないでしょうか。

ケーキ作りは「先客」と関わるためか、あとは……あれだ……キャラクターとして生まれ落ちしときからずっと背負ってきた「業」、「ライターが自分の好みの男の設定をつっこみたがる」という性質がここでも発動したからかなって……

セガぷよの話はあんまり積極的に追ってはいないのですが、それでもシェアルアカウントというテントをXにこしらえて一人キャンプをしていると流れてくる情報はあります。ライターさんが、その、ええと、あれ、あれみたいですね。シェアル……なの……かな……?(こういう発言するのにすごい慎重になってしまう)(けど……頼む……詩子……そのままセガぷよの小林靖子になってくれ……)(?)

[ぷよぷよ サタンのスペース遊園地]

この本もレビュー欄見てるとコンパイル派も楽しめるっぽい? のでちょっと気になる。
ていうかこの本の惹句自体が「ドラコケンタウロスやウィッチ、シェゾも登場!!」っていういわゆる初代組登場がヒキになってると思われるあたりが…… そしてそこにルルー入らないんだというか……

まとめ

そんなわけでシェゾについて考える、というか私が長いこと横目でぼんやり見てきたものやこと、自分用に言語化してまとめなおしました。今回でおしまい。
とにかく二次創作したいけど一旦整理しないとなーーと思ってたのでよかったです。
またいろいろ履修していったら考えも変わると思いますけどもあくまで現時点のまとめで。

私はもともと昭和の実用書を探して「当時の価値観」「時代性」「当時の流行」を推測しながら読むのが好きなので、期せずして魔導物語について考えるのも似たかんじで楽しかったです。
読んでいただきありがとうございました。


なんつっても「赤いぷよぷよの帽子」かぶってますからね ぷよぷよというゲームの象徴にしようとしていたのはあきらか


りんごのほうがデザインとしての普遍性の強みがあるの、力がぬけたからだとおもう